伊豆 月ヶ瀬温泉 雲風々 Vol.1

Category : 旅館・ホテル

団から個へ

伊豆・月ヶ瀬温泉の宿「雲風々-ufufu-」は、団体客中心の旅館を個人客向旅館へ改め、新たなブランド構築とともに大幅なリノベーションを行った再生プロジェクトです。個人客向けのおもてなしを考えた際に、第一印象の決め手となるエントランスには、存在感のある門を設けることを計画しました。乗用車には余裕があっても大型バスは通れない高さとなっており、くぐる事で脱日常へ誘う車にとっての「にじり口」の演出となっています。車を降りてからもその世界観を感じてもらうため入口も変更。客室までのワンクッションとするべく、既存のパントリールームを一部解体して茶室の庭の景色を愛でる待合を再現しました。渡り廊下上部の灯りは、すれ違う人の顔を見にくくしてプライバシー性に配慮するため最低限とし、行燈により足元を照らすことで安全性を確保しています。ロビーから遠かった客室は動線や広さの問題があったため、ブライベート性の高いエステルームに改修することでさらに宿全体の非日常感を演出できました。
団体客が待機するために使用していた大きなロビーは、個人客向けの余裕あるスペースを持つダイニングとしてコンバートしました。ダイニングを入って真っ先に目に飛び込むのは、全長約15m、奥行75cmの大カウンターと、雄大な狩野川を一面に取り込む大開口。床材にはモンスターウッドと呼ばれる幅250mmのダイナミックな複合フローリングを使用しています。ダイニング正面のガラスは、お客様の顔が鏡のように映ってしまわないよう上部照明の照射角度を調整して、手元のお料理のみに照明があたるように配慮。敷地内にはダイニングのカウンターからの眺望を意識した植栽計画も施しています。現場で何度も照明機器の設置場所を検証することで、ライトアップ時には木々が奥行き感を持って浮かび上がるように気を使っています。前後二列に分けた照明は手前が手前の竹林を浮かび上がらせ、奥側はハイビームで狩野川の対岸を照らすことにより車道からの視界を遮る役目を果たしています。